image team:現場のあれこれ 〜話題のHDVカメラ FX1レポート〜 2005/01

■世界初の1080i民生用ハイビジョンカメラ「FX1」

既にネットではあちこちで書かれているので、今更といった感じはあるかも知れませんが、 HDVカメラであるソニーFX1を3週間程お借りできたので、その感想です。 専門用語やら機種名があれこれ出てきますので、機材好きな方向けです。

今回は「HDVで撮影してDVモードで再生」という条件でいろいろ書いてみたいと思います。

なぜかというと、HDVでの編集及び視聴環境がまだ十分整っていない状況で運用する上では 必然とこの条件になってしまうからです(私も所有していませんし・・・)。 もっともちょっと良いスペックのPCさえあれば、対応ソフトを買えば直ぐにでも汎用1394ボードで ネイティブのHDV編集ができてしまう時代ですが。

■画質に関して(DVモードで再生時)

放送用ハイビジョン映像のダウンコンバートした映像というは、SDでもものすごく緻密で 綺麗な印象がありますが、そのような感じではありません。 HDというと750と比べてしまうのですが、価格差を考えると、あくまでPDやDVX100A等と 比べてみるのが王道かな、とも思います。結論から言うとSDではDVX100Aの方が全然綺麗です。 PDと比べてみても、PD以上にダイナミックレンジが狭いので、飛ばす所は一気に真っ白になります。 もっとも使っているとそのうち割り切りが生まれますので、慣れてくると無意識に飛ばすようになって しまいました。

色に関してですが、わずかにクセのある色が出ます。なんというか、常にマゼンタのフィルターが かかっているような感じです。VX1000を使ったことある方は、なんとなく常に クセのある色がかかってしまうモヤモヤ感?を感じた事があるかと思いますが、 それのマゼンタ版といった感じ(あくまで色に関してで、見えそうで見えないようなモヤモヤ感は 無いです)といえば解りやすいでしょうか。これはホワイトバランスを取っても 解消されませんが、逆にさらに悪化する事はあるので要注意です。単体で使っている分には問題に なりませんが、その他でも特に発色が綺麗という訳でもないので、色に関してはあくまでも 民生機と思ったほうが良いと思います。

この2点から屋外で使っている分には、ちょっと性能の良いDV民生機を ワイドにしたようなイメージに近いかと思います。

逆にDVモードでも特筆すべき点は、夜の街角風景や小さいライブ会場の映像は ものすごく綺麗です。感度が低いので、常に9db程度ゲインアップしていますが、 ゲインを上げてもノイズ感はほとんど気になりません。 PDでは、暗いとベタ〜としてしまいますが、そのイメージは全く無く、 暗い雰囲気をそのまま切り取ってくれて、暗い描写に関しては750のダンコンに 近いようなイメージの絵が出てきます。日中の絵でちょっとがっくりしていましたが、 この絵にはビックリしました。

さて、HDにも関わらずデータレートが25Mという事で、いろいろ不安な点が ありましたが、実際に使ってみると、十分実用範囲だとは思いました。 将来業務用カメラが出たら、思いのほかそこそこのHD映像が出る規格かも知れません。 いくつか気になる点を書くと、まずDVのようなエッジのギザギザ感が無いのは 好感がもてます。その反面、画面のあちこちの細かい部分でMPEG特有のベタっとした 表現になり、随分と情報を間引いている感も出ています (例えば、一色単の塀が画面の一部に映っていたらそこだけ異様にペンキを塗ったような  ベタっとした感じになる時がある)。 また、手持ち撮影が多かったのですがブロックノイズはまず気になりません。 巷で問題になっている瞬間クロック(15フレームフリーズするドロップアウト)は、 専用?のDVM63HDを8本、通常の60分テープで2本撮影しましたが、 今のところ発生していません。ドロップアウトに関しては、アナログでもデジタルでも テープである以上は発生する危険性はあるので、どうしても避ける必要があれば バックアップを回したり、グローバルカットを撮ったりと対策をするしかないですね。


保育園で半日テスト撮影させてもらいました

HDV2カメでのライブ収録を試みました

■使い勝手に関して

使い勝手に関しては良い部分と悪い部分が混在していますが、散歩や旅行の 片手間に持っていっても良いかな(このクラスを持ち歩きたい、 という時点でかなり特殊ですが・・・)、という印象を受けました。 以前、プライベートで海外にPD150+ワイコンを持っていきましたが、バランスの 悪さで懲りましたし、100Aはそもそも片手で撮影は難しいカメラです。 その点、FX1はグリップを握りながら片手で撮影したりもできますし、 想像以上にバランスも良く重さもそれほど感じないので、正月はほとんど毎日撮影した程です。

特筆すべきはズームリングでこれには拍手です。始めに多少遅れが生じるようですが、 実質問題なしです。トルクも重めで(放送Jレンズで言えば5番ぐらいで 業務用レンズから見ると重たいでしょう)、ゆっくりしたズームにも十分対応できます。 バラエティ撮影のような素早いズームはさすがに無理がありますが、100Aより 使いやすいと思います。ただし、あくまで電動リングなので、撮影中にリング(手動)から レバーに切り替えると、とんでもない事が起こります。店頭でやってみてください(笑)

注意する点で特筆すべきは露出のマニュアル設定時です。最近はプロの現場でも このクラスは使う事があると思いますが、このFX1がきたらこれだけは 覚えておいた方が良いです。それは、マニュアルに設定していないものは オートになっているという事です。当たり前のような気がしますが、実は落とし穴。 例えば、逆光などでオートだと暗いので露出を開けたいとします。 アイリスを手動にしたらF8だったので、どんどん空けてF4にしても明るくならないんです。 なぜかといえばそれ以外の数値がオートで動く、つまりシャッタースピードが上がっていくわけです。 結果、意味がないので(ゲインさえも上がります)、ゲインとシャッタースピードは 常に手動で固定しておかないといけません。ちなみに、ゲインを固定すると ゲインスイッチが無効(業務用同様L/H/MのSW)ですから、これもちょっとややこしい (ゲインスイッチがLでも自動で6db上がっていたりするので、さらにややこしい)。 あと通常は心配ないですが、報道で囲むような他社とごった返した現場でマニュアル撮影していると、 シャッタースピードの調整ダイヤルが後方にある為、意図せず動くことがあります。 ちなみに、書き忘れましたがアイリス調整は物理的にやりずらいです。 人差し指だけでちょいちょいとダイアルできないので、かなり不便で、これはPDの方が まだやりやすかったです。慣れるまでかなり不自由でしょう。

実際に撮影していて、多少不自由に感じる点では、実質ピクチャープロファイルという 設定(AEシフトやら多少の画質調整の数値を6個記憶できる、 特にAEシフト(自動露出時の設定)に関しては通常時は多少プラス方向(開け気味)になると思います) を使う事になると思いますが、アイリスの最大絞り値という設定があり、最大でもF11まで しか設定できません。つまりオート撮影時、突然急激に絞りたい状況になってもF11 までですから、完全に白飛びになります。NDフィルターを入れろ、という事でしょうが、 片手で気楽に撮影しているケースでは、結構やっかいです。 ただ、逆に気楽に撮影する分には、先に述べたAEシフトをかけてオートでも割といけます。 と、いっても、カメラマンはクセ?でマニュアルで使う事が多く、私もその一人ですが、 マニュアルだと今度は突然の逆光時に逆光補正ボタンが効かないのは要注意。 せっかくボタンがあるので、ちょっと補正してくれると割と助かるんですけどね。

■最後に

正月は実家にも帰ったので、実家でも見てみました。少し古い年式のテレビもあったので 試しに見てみたら、ものすごいモアレでした。古いテレビではSDとしても高解像度であるのが 逆にネックになります。もっとも、ワイドテレビであればそれほど心配ないと思います。

結局、DVカメラとして見た分では、いろいろ細かい?操作性の問題や画質の問題もありますが 旅行の片手にできるだけ高画質に!という要望や、手軽に子供を高画質に!という用途ではベストだと思います。 ともかく気軽に撮れますし、撮ろうという気になるカメラです。もちろんHDVで撮っておけば もうすぐ編集も可能でしょうし、解像度だけはSDとの比較にはならないでしょう。 解像度というのは比べてしまうと一目瞭然なので、色の不満も吹っ飛びますし、 Lサイズの写真ぐらいはプリントして楽しめるでしょう。 逆にSDで色も追求してしっかり撮りたいならば100Aの方がオススメという気もします。 逆を言うと解像度というのは意外とすぐに慣れてしまうので、比べなければ通常のテレビサイズでは SDでも十分だとも感じます。 結論としては、色などを追求して撮影するのではなく、手軽に気楽にハイビジョン!という 用途に最適なカメラ、という感じでした。そのままの結論ですね、すみません。。。

ちなみにお返ししたあとですが、自宅にHD視聴環境も無く、 個人的な旅行などのイベントも無いので、しばらくは買わない予定です。 ただ、個人的には撮っていて楽しいカメラでした(レポートまで書いてしまうほどですし。) しかもそれがハイビジョン撮影なのですから、そばにあるなら常に撮っていると思います。 それにこの値段を払うかどうか、という点が購入の分かれ目でしょうか。 (この値段だと、仕事で減価償却を考えてしまうクセが・・・(汗))

■追記(2005年4月)

2月にHDCAMで仕事をしまして、そのサブ機としてFX1が回っていましたので 本来のハイビジョンカメラとしての感想を追記しておきたいと思います。 一言で言うと「画質という面から見ると撮り方と使い方に制限がある」という事です。 完全にFIXの絵でしたら、露出さえ適当であれば(←難しいですが)大きな問題は 無いと思います。ところが、パンしたり手持ちで撮影すると、一気に解像度が落ちますし、 明るさが落ちたような印象を受けます。HDで見るとMPEG特有のざらざらノイズも くっきり見えますし、ハイビジョンというには厳しいなぁ・・・というのが正直な印象です。 個人的には、予算の都合で制作だけで事前取材をするときに、三脚を使ってFIX限定で撮影してくる等の 使い方のみに限定される気がします(あくまでHDという画質優先からの話です)。

ところで、既にHDCAMとHDVをコンバートする機材があり、試しにHDCAMから HDVに落とした映像を見せてもらいました。パっと見はほとんど差を感じません。 動いたときの解像度の低下もありませんし、フォーマットの問題ではなくFX1の問題でした。

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