image team:現場のあれこれ 〜音楽ライブ撮影 あれこれ〜 2005/05

■DVDもしくは放送用の音楽アーティスト撮影もの

音楽アーティストのライブ撮影は、4〜9カメで現場SWが一般的です。アーティストによってはパラ収録を含めると12カメ程度、場合によってはバックヤード撮影を含めると20カメ以上出ている現場さえもあったりします。この規模になると会場内中継が入っているケースが大半で、この場内中継回線は収録SWアウト本線と何本かのカメラ絵(主にアップカメラやトラックカメラでリターンは返らない)が中継専用SW卓に入っていて、ここでスイッチアウトされています。テレビで中継映像が見えているときに同じ絵が出ている時と違う絵が出ている時があるのはその為です。

カメラが増えれば増えるほどカメラマンの負担は軽くなります。後方の高倍率レンズ(通常は40倍以上でさらにエクステンダーを使う事もある)を付けたカメラは常にアーティストを狙っていれば良いわけですし、トラックカメラ(舞台前でドリーしているカメラ)は下手にきたらベース、センター付近ではボーカル中心等、舞台上はドラムとボーカルバックショット等割り当てができるからです。あとはインカムから曲のパターン(次がさびです等)と必要であれば指示がくるので、それにしたがって絵を送り続ければ良いわけです。いつタリーが来るかわからないので、常に使える絵を送っておくのが基本です。「次○カメ行きます!」とか声はかかりませんし、細かい絵割りはありません(スタジオライブものには細かく絵割りがされています)。以前はステージ上のカメラマンはなるべく見えない位置から撮影するのが基本でしたが、最近は両極端なアーティストも多く、カメラマンはアンプの後ろに隠れていて必要なときだけしか出ることが許可されないケースもあったと思えば、それこそアーティストの真横まで出てきて撮影してしまう現場もあります。

番組のコーナー取材などでは3〜5カメ程度のパラ収録になってしまうのが一般的でしょうか。それも引き(全景)だけはENGで前方の上手と下手はPDという場合もめずらしくありません。全カメラPDだけという事もありますし、逆にENG1台で撮り切るケースもあります。また、他局も同時取材する場合は、各局でプール取材(素材を共有)することもありますが、N○Kだけは原則的にプール不可だそうです。プール取材の場合は、パラ素材は全局同じですが、編集はそれぞれの局で行うので各局で違う映像に仕上がります。いずれにしても現場ではインカムなどは無く、事前の打ち合わせだけで撮ります。前方カメラは割りと自由にとれるのですが、引きカメラは常に使える絵を撮っておかないと編集で困ることがあるので、慣れていないと難しいです。コツはパンは極力使わないことでしょうか。パンの最中は編集で使えないので、被写体を変えるときもズームイン、ズームアウトを使うと編集でも挿せる、というライブ独特のパラ収録方法があります。

ジャンル別の独特な話としては、ジャズ収録の場合、カメラ台数が少ない(2〜4カメ程度)ケースが多い上、一度タリーが来るとしばらく本線に乗りますから、ゆっくりとしたズームや動きが好まれるケースが多いです。クラシックの場合は楽譜に完全に絵割りができていますのでその通りにとって行けばよいのですが、楽譜にはダルセーニョという反復指示があったりするので楽譜が読めないといけない上、「3rdバイオリン中心で」等の指示ですから多少オーケストラの知識がないといけません。


白いアーティストの左右にはカメラマンが!

センター2カメの場合、なるべく近い位置で設営(下記文章参照)

■2カメでのインディーズバンド収録方法 公開!

さて、低予算でインディーズバンドの収録もしていますので、そのノウハウをここで公開しておきます。参考になるようであれば参考にしてください。いろいろなやり方があると思いますが、最近はここに書いた方法で落ち着いています。カメラ台数は基本的に2カメです。3カメでアバウトに撮るなら、2カメできっちり撮ってしまったほうが編集に時間もかかりませんし(=低予算でもいける)、仕上がりも良いケースが多かったので、思い切って2カメにしている事が多いです。

★上手と後方の前方から手持ちで2カメ撮影

2カメというと、後方センターに1台+前方に1台というのが定番かと思いますが、結果から言うと編集しずらいです。どちらも同じ被写体を狙っている可能性が高く、それを避けると後方センターは無難な絵しか押さえられない、前方だけハンディにすると、後方センターの絵を指したときにかったるく見えるケースがほとんどです(稀に少ない人数のユニット収録などでは行いますが、その場合後方カメラは前方カメラの切り替えし時の逃げ絵扱いで、実質は前方カメラが中心となる)。思い切って前方にハンディで2カメを使い切ってしまいます。この場合、決まりごととして演奏中のメインの楽器は近いカメラが押さえる、その時可能であればもう1台はロング目を狙っておく、という事だけで、あとは自由にとっている事が多いです。コツはパンは編集で挿しにくい(人数が多くて小さいステージなどではそれほど問題にはなりません)ので、なるべくパンは使わず、サイズ変えや被写体変更のズームイン・ズームアウト最中も挿せる絵(=楽曲にあわせた動作をすれば大丈夫です)をとっておく事でしょうか。これは慣れてくると撮影も楽しいですし、編集もスムーズにできると思います。予算とカメラがあれば3カメとして引き絵を収録しておくと、保険になります。

★後方から三脚を付けて2カメ撮影

ステージセンター後方に三脚を添えて2カメで撮影する方法です。これは小さいライブ会場でしっとりした雰囲気のライブには特に有効ですし、長時間イベントではハンディのみだと疲れがでますので、こちらで収録するケースも多いです。可能であればお互いの絵を液晶モニターなどで見せても良いのですが、いざ収録に入ると、あまりチェックしている余裕はありません。単純にアップカメラ専用と引き目専用に分けて運用しておくのが無難です。絵数が少ないので、一度絵を決めたら少し長めにSWされると意識して収録する(例えばゆっくりしたズームワーク等)のがコツです。そうしておくと、編集時に2カメをぱちぱち切り替えてもつながりますし(クラブイベント等では有効)、単純に長い1カメショーで見せる事も可能になります。可能であれば高倍率のズームレンズがあると絵数が稼げますのでベターです。また予算が少なくワンマン2カメ収録の場合は、1台を無人にしてこの方式をとっていますが、それでも引きの逃げ絵があるので無駄な動作(被写界変えのパンや、見せながらズームインしてサイズを変えるロス)が省けるため、より効果的な編集ができると思います。

★音声の収録方法

音声は現場でミックスするのは難しいケースが多いので、オーディエンス用のステレオマイクを立てての収録+会場側からラインがもらえればラインを別のカメラに収録し、編集の時にミックスするのが確実です。小さいライブハウス場では、ドラムなどはマイクを使っていないケースもありますので、ラインよりオーディエンスマイク中心での収録の方がベターな場合が多いです(ラインの方もかぶり(他のマイクに入ってくる音)でそこそこの場合が多いですが)。ステレオで収録する場合は必ずマニュアルレベルで収録してください。L、Rそれぞれがオートだと、片方だけ大きな音が入ると全ての定位が流れてしまいます。

1カメで撮る場合、ステレオ収録に拘るならば規模にもよりますが、PAアウトの音声がしっかりとれる位置、もしくは視聴上の良い位置でのオーディエンスマイクを中心に考えた方が良いケースが大半です。無難な方法としては1chにライン、2chにオーディエンスマイクをそれぞれモノラルで入れてしまう方法です。撮影に入るとレベルの管理ができませんから、ラインは無難にオートにしてもほとんど問題ない一方、オーディエンスの方は臨場感の意味とバックアップの意味があるのでマニュアルで低めに収録しておくとなにかと便利なケースが多いです。モノラルのドセンターの定位が気持ち悪いなら、後からオーディエンスの方にプレートリバーブやディレイを足してあげると、広がりがでます。この時にエフェクト成分の高音部を絞ると意識しないエフェクトができます。

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